ハード・ウェイ【2019年8月26日放送】 |
カテゴリ
以前の記事
2024年 03月 2024年 02月 2024年 01月 2023年 12月 2023年 11月 2023年 10月 2023年 09月 2023年 08月 2023年 07月 2023年 06月 2023年 05月 2023年 04月 2023年 03月 2023年 02月 2023年 01月 2022年 12月 2022年 11月 2022年 10月 2022年 09月 2022年 08月 2022年 07月 2022年 06月 2022年 05月 2022年 04月 2022年 03月 2022年 02月 2022年 01月 2021年 12月 2021年 11月 2021年 10月 2021年 09月 2021年 08月 2021年 07月 2021年 06月 2021年 05月 2021年 04月 2021年 03月 2021年 02月 2021年 01月 2020年 12月 2020年 11月 2020年 10月 2020年 09月 2020年 08月 2020年 07月 2020年 06月 2020年 05月 2020年 04月 2020年 03月 2020年 02月 2020年 01月 2019年 12月 2019年 11月 2019年 10月 2019年 09月 2019年 08月 2019年 07月 2019年 06月 2019年 05月 2019年 04月 2019年 03月 2019年 02月 2019年 01月 2018年 12月 2018年 11月 2018年 10月 2018年 09月 2018年 08月 2018年 07月 2018年 06月 2018年 05月 2018年 04月 2018年 03月 2018年 02月 2018年 01月 2017年 12月 2017年 11月 2017年 10月 2017年 09月 2017年 08月 フォロー中のブログ
最新のコメント
メモ帳
最新のトラックバック
ライフログ
検索
タグ
その他のジャンル
ブログパーツ
最新の記事
外部リンク
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
2019年 09月 01日
【タイトル】ハード・ウェイ
【放送日】2019年8月26日 【製作国】アメリカ 【製作年】1991 【原題】THE HARD WAY 次回作の役作りのためにNY市警の刑事と行動を共にしようとするハリウッドの人気スターとその刑事の活躍を描く。 主人公のハリウッドスター、ニック・ラングを演じたマイケル・J・フォックスも素晴らしかったが、本作はやはり刑事のモスを演じたジェームズ・ウッズが出色。粗野で短気で、でも仕事には一生懸命な刑事を活き活きと演じる。冒頭、スティーブン・ラング演じるパーティークラッシャーを追いかけるアクションシーン一発で、彼らの生きる街の荒廃っぷりやそこでの彼らの過酷な仕事の中身を観客に印象づける。ラングの暮らす小綺麗な世界との対比が鮮やかで、ここのコントラストをうまく描いたことでフォックスの演技が抵抗なく受け入れられるようになった。ラングの造形はかなりデフォルメされていて現実離れしているが、ここはフォックスがさすがの貫禄。自らのキャリアを彷彿とさせるような設定も手伝って、我儘ながらも憎めない人物になっている。設定がかなりひねってあるのでメインの二人のキャラクターの造形は重要なポイントとなるが、見事にクリアした。 筋書きとしては事件を追う刑事モノとしてのメインストーリーにコメディとラブストーリーがプラスされているが、ラングの世間知らずっぷりとモスの単純さが相まってありがちな物語がなかなか凝った展開を見せる。捜査としては銃の売人を見つけ、犯人を呼び出させて追いかける、というだけなのだが、この一つ一つが面白い。これはやはりウッズの刑事っぷりが本物っぽいのが大きい。だからこそリアリティにこだわって微妙にずれた取材を繰り返すラングの視点が観客と一致する。加えてこの2人の会話が全く噛み合わないのも面白い。取材を嫌がるモスの拒絶をラングが全く意に介さず、モスがいつのまにかそこに巻き込まれてしまうという構造。モスの動作をいちいち真似したり、今まで自分が目にしたことのないスラムの光景にいちいち感動したりといったラングの取材が物語の進行ともうまく絡むので、観客の視線もうまく物語に沿って移動することになる。この構造は秀逸だった。 アナベラ・シオラ演じるスーザンがラングになびくのかと思わせながらきちんとモスを想い続けたのもいい。最後の最後で彼女が事件に巻き込まれるのはちょっと予想しなかった。冒頭からたびたび登場するラングの看板上でのラストの大立ち回りはクライマックスに相応しいスケール感。ラングのアクションがややご都合主義の感があるが、まあこれはよしとしましょう。パーティークラッシャーの不死身っぷりも良い意味で現実離れしていてこれはこれでいい。予定調和で終わるのかと思って観ていたらマイケルまさかの被弾でちょっと驚いたが、被弾が死と直結しないのもまたお約束。ラストは後味の良いコメディタッチで爽やかに終わった。細かい部分で気になる点は少しあったものの、総じて作品のレベルは高く、楽しんで観賞した。 作品全体を貫くメタ構造について、言及しないわけにはいかないだろう。70年代末にはチビデブのいじめられキャラだったフォックスは、1982年開始のTVシリーズ「ファミリータイズ」で一躍全米のアイドルとなった。その後「バック・トゥ・ザ・フューチャー」三部作や「摩天楼はバラ色に」などのヒット映画を生み出し、フォックスは一躍80年代を代表する全米スターとなる。BTTBのPART3は1990年の公開だが、フォックスが名声を得た80年代の後半から、フォックス自身も俳優として次の段階に登ろうと悪戦苦闘していた印象がある。本作の前には「再会の街」や「カジュアリティーズ」などのシリアス路線、本作の後には「ドク・ハリウッド」や「ライフ・ウィズ・マイキー」など、それまでの印象を残しながらも新しい演技を見せようという意図が感じられる作品が続く。だが、それらの挑戦の全てが必ずしもうまくいったとは言えなかった。特に前半2つのシリアス路線はかなり苦戦した印象がある。やはり観客は明るく楽しいフォックスを求めていたのだと思う。本作の設定は見方によってはそんなフォックス自身の苦闘っぷりと重なるようにも見える。彼の代表作をインディ・ジョーンズばりのご都合主義映画として描いたのもかなりの挑戦だろう。一歩間違えばフォックスのそれまでのキャリアを笑い者にし、彼自身を落ち目と感じさせてしまう危険を孕むものなのだ。それでもあえてこの設定に踏み込んだのは冒険だったと思う。結果として、80年代の狂騒が終わった後の90年代の風景が確かにそこには描かれている。都市の風景一つとっても、言葉にするのは難しいが90年代独特の雰囲気があるのだ。80年代のハリウッドが描いたのとは違うアメリカ。フォックスが駆け上がった時代とは違うアメリカがそこにある。変わりゆく時代の中でそれでも逃げずに俳優として挑戦を続けたフォックスには拍手を贈りたい。ちなみに、彼が再び輝きを取り戻すのは彼の出発点となったテレビのシットコムだった。復活に至るまでの過程を描く秀逸な一本。願わくば、現在進行中の病を超えて、再度の復活を見せてくれることを願っている。「マイケル・J・フォックス・ショウ」がコケてしまったので、なおさら。
by goodbyegirl1974
| 2019-09-01 23:30
| プレミアムシネマ
|
Comments(0)
|
ファン申請 |
||